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7月19日、福岡商工会議所の若手ビジネスパーソンの異業種交流会「福商ビジネス倶楽部」にて、当事務所の弁護士 岩橋愛佳が「弁護士&当事者が教える『LGBTQ+』講座」と題して講演をさせていただきました。
「LGBTQ」とは、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング(又はクィア)のことを指し、「LGBTQ+」とは、性的マイノリティの総称として使われる言葉です。
2021年のオリンピックでも、LGBTQ+の選手が多く出場したことが話題になりましたね。
さて、この講演会で中心としてお話をしたのは、2020年6月から施行された「労働施策総合推進法」、通称「改正パワハラ防止法」。
企業は、この法律に基づいてパワーハラスメントに対応することが義務づけられています。
労働者も、パワハラ問題に関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払う努力義務があります。
そして、このパワハラの中に、今回「SOGIハラ」が含まれたことで、LGBTQ+の当事者にとって大きな改正となりました。
何やら英字が続くのでわかりづらいのですが、ざっくり言うと
SO → 性的指向。どんな性を、恋愛や性愛の対象にするのか
GI → 性自認。自分の性をどのようなものと認識するか
という意味で、これらを合わせて「SOGI(ソギ、ソジ)」と言います。
LGBTQ+は、性的マイノリティ全体を指す言葉ですが、SOGIは誰しもが持っているものです。
多くの方は「SO(性的指向)は自分の性とは異なる性」「GI(性自認)は、生まれたときの男・女の性と同じ」になると思います。
ようやく本題ですが、「法改正でSOGIハラ対応って何をすればいいの?」と思う方も多いはず。
この法律に基づいて策定された厚生労働省のガイドラインには代表的なSOGIハラとして次のように記載されています。
精神的な攻撃の例として・・・
① 人格を否定するような言動を行う。
相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。
個の侵害の例として・・・
② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。
①の典型的な例として「ホモ」「オカマ」「オナベ」「レズ」などの差別用語を使っていじめをしたり、“いじり”をしたり、LGBTQ+であることをばかにしたり、さげすんだりすることです。
「キミ、ソッチ系の人だよね、気持ち悪い」という言い方もNGです。
②の典型的な例として「ゲイであることを職場の人にばらす」というものです。
一橋大学アウティング事件、記憶に新しいのではないでしょうか?
(ゲイの学生がクラスメイトにゲイであることをクラスにばらされて学校から転落死した事件です。)
差別偏見がまだ横行する世の中で、「LGBTQ+」であることをばらすのは、当事者にとっては「生きていけない」と感じさせるほどの危険な行為です。
絶対に本人の許可なく、ばらしてはいけません。
このように、許可もなく、「LGBTQ+」であることをばらすことを「アウティング」と言います。
事業主については、上に書いたようなパワーハラスメントがおきないように、防止する義務があります。
具体的には以下の10の措置です。
① 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、 労働者に周知・啓発すること
② 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規 定し、労働者に周知・啓発すること
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労 働者に周知・啓発すること
難しい説明が多いですが、簡単にいえば「人が嫌がることを言わない・しない・させない」、ただこれだけです。
しかし簡単には差別偏見もなくならないのはなぜでしょうか。
それは、社会を作る一人一人が、無意識に、「差別を放置してもよい、LGBTQ+の人達は差別をされても仕方が無い」と感じているからだと私は考えています。
そのため、差別が起きる、当事者は傷ついても声をあげづらいから黙ってしまう、そして差別が見過ごされて差別が起きる・・・この繰り返しです。
しかし、SOGIの中身が違っても、同じ人間です。
同じ人間が、差別され偏見にさらされることを、「放置してもいい」「差別をされても仕方が無い」と言えるのでしょうか?
差別偏見を許さないことは、ひいては自分が別の側面(たとえば貧富、地位、家族、国籍、居住地・・・)で差別偏見にさらされないことをも意味します。
そういう意味では、LGBTQ+への差別の問題は、決して他人事ではないのです。
皆さんが一歩立ち止まって、自分や自分の周りの人々の言動を振り返り、「誰かがひっそり傷ついているかもしれない」と考えるようになるだけでも、SOGIハラはきっとなくなっていくでしょう。
ぜひ、今回の法改正を機に自分事として考えてみていただきたいと思います。