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平素よりお世話になっております。
岡野法律事務所弁護士の田上雅之と申します。
今回は、マスクの着用の自由化に関連して、予想されるトラブルについて紹介します。
政府は、新型コロナウイルス対策にかかるマスクの着用について、屋内屋外を問わず、令和5年3月13日以降は、「個人の判断に委ねる」との方針を示しましたが、今後事業者はどういう対応が必要となるのでしょうか。
たとえばあなたの会社が、引き続き「マスクの着用」をお客様側にお願いしたい立場だとします。
マスクを着用しないお客様が来店した場合、入店拒否ができるのでしょうか。
結論から言えば、入店拒否できると考えられます。
まず、店側には原則として、「どのようなお客様を受け入れるか」の判断の自由があります。
店側が、マスクを着用しないお客様を入店拒否することに、合理的な理由があれば、入店を拒否しても問題はありません。
そして、マスクの着用をお客様にお願いする理由は、他のお客様や従業員への感染防止だと思います。
これは合理的な理由といえます。
特に病院・介護施設といった場では、事業者は入院患者・入居者との関係で、これらの人々の健康・安全を守る義務があるでしょうから、その意味でもマスクの着用をお願いすることは当然だともいえるでしょう。
ただし、事業に関する法律でその自由が一部制限されることがあるので注意が必要です。
令和4年9月に、「マスク拒否をした乗客を降ろしたバス会社が行政処分を受けた」というニュースがありました。
道路運送法では、一部例外を除けば、乗車拒否が許されない定めになっているからです。
このように、会社の事業にかかる法律で入店拒否が処分対象となっている場合があります。ご自身の事業に関係がある法令にはよく注意しなければなりません。
では、あなたが会社の社長だとして、政府の方針に従い、従業員のマスク着用を各自の判断に委ねるとすることには問題がないのでしょうか。
結論としては、新型コロナウイルスの脅威レベルの扱われ方や、事業内容によって、マスク着用を自由化することの法的リスクの程度は変わってくることになります。
人を雇う側は、労働者に対して「安全配慮義務」を負っています。
新型コロナウイルスに限らず、「そのような状況で労働させたら、病気になる」といえる環境で労働させて、実際労働者が病気になってしまった場合には、労働者から安全配慮義務違反を理由に、損害賠償を請求されるリスクがあります。
たとえば、新型コロナウイルス罹患者の対応を要求される事業では、むしろマスクの着用を義務づけないと、使用者にとって安全配慮義務違反になる可能性が高いと思われます。
また、今後、感染力・重症化率の高い変異株が出現することがあれば、その他の事業においても、感染対策としてマスク着用を義務づけなければ、安全配慮義務違反になる可能性は出てきます。
まずは各事業の業界が定めるガイドラインがあれば、それを参考に社内での対策を決めていき、感染にかかる情勢を見ながら、臨機応変に感染対策を強化することが望ましいといえるでしょう。
今回のメルマガでは限られた想定ケースをご紹介しましたが、「マスクをしない従業員への対応の仕方は?」「お客様にマスクをお願いする場合の文書はどういうものが適切?」といった様々な悩みが今後生じてくるかと思います。
当事務所は多様なトラブルのご相談に限らず、社内ルールの構築に関するご相談も承っていますので、是非お気軽にご相談下さい。